盛岡ハヤシライスを召し上がってくれた学生の皆さまへ
本日も盛岡ハヤシライスを選んでくださり、本当にありがとうございます。
このお手紙では毎回、ハヤシライスの背景や、私たちの活動について少しだけお話しています。
いつもは岩手大学の学生の皆さんにお会いする機会が多いのですが、今回は夏休みということで、先生や職員の皆さまにもお手に取っていただく良いチャンスです。
そこで、今日は「当たり前」の話をしたいと思います。
私たちは、毎日の生活の中で「当たり前」だと思っているものを、意外と大切にしていません。
毎日通っている道。
昔からあるお店。
地元で食べてきた料理。
長年続いている仕事。
誰かが何気なく教えてくれた知恵。
そこにあることが当たり前すぎて、「価値があるもの」だと気づかないことがあります。

盛岡ハヤシライスも、まさにそうでした。
この味は、かつて盛岡で「洋食みずの」を営んでいた私の伯父・伯母が作っていたものです。
伯父・伯母にとっては、特別なものではなかったのかもしれません。
お客様に料理を出して、喜んでもらう。
それを何十年も続けていただけだったのだと思います。
ところが、時代は変わりました。
「洋食みずの」を知らない世代が増え、当時の味を知る人も少しずつ減っていきました。
そこで私たちは、TOVLABで伯母が残したレシピをもとに「盛岡ハヤシライス」として復活させました。
すると、不思議なことが起きました。
昔からこの味を知っている方には「懐かしい」と言っていただき、初めて食べる若い世代からは「こんなハヤシライスは初めて」と言っていただける。
同じ一皿なのに、世代によって見え方が違うのです。
そこで私は思いました。
誰かにとっての「当たり前」は、誰かにとっての「特別な物」になるのかもしれない。
これは、食だけの話ではないと思います。
大学の先生方が長年積み重ねてこられた研究や知識。
職員の皆さまが日々当たり前のように支えている大学の仕事。
地域で何十年も続いてきた企業や商店。
岩手に受け継がれてきた文化や風景。
そこにいる私たちにとっては当たり前でも、外から見れば、とても価値のある特別なものかもしれません。
そして、そうした価値は、誰かが「残そう」と思わなければ、いつの間にか消えてしまうこともあります。
だからこそ私たちは、盛岡ハヤシライスを通じて、過去を懐かしむだけではなく、
「次の世代に何を残していくのか」を考えていきたいと思っています。
盛岡には、まだまだたくさんの「当たり前」があります。
もしかすると、その中には、未来の誰かにとっての「特別な物」が眠っているのかもしれません。
この一皿が、その特別な物を見つける小さなきっかけになれば嬉しいです。
今日のハヤシライスが、皆さんにとって少しでも「特別な物」になっていますように。
改めて、本日も召し上がっていただき本当にありがとうございました。
ミッドホールディングス株式会社
代表取締役 水野剛
